いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



それを見逃さなかった周りからもワッと声が上がった。



「止めろっ!」



圧迫を続けていた白鳥にストップをかける。


……戻ったか……?


そのとき。

救急隊員が教室に飛び込んできて……瞬間、俺は全身の力が抜けたように尻餅をついた。



「はぁっ……」



今になって、全身を震えが襲う。


ただ、無我夢中だった。

目の前の人を助ける、その想いだけで俺は突き動かされていた。


でも我に返った今、体が震えてどうしようもねえ……

小刻みに震え続ける手の先を握りしめる。


医者になろうって俺が、こんなことで震えるなんて情けねえな。


でも……目の当たりにしてわかった。

誰かの命がこの手に掛かるということが、どれだけ恐ろしいことなのかを。


兄さんも……父さんも……そんなプレッシャーの中をずっと生きてきたんだな。


そんなふたりの足元になんてまったく及ばないが、それでもはじめて分かった気がしたんだ。


そして……ほんの少しだけ、ふたりに近づけた気がした……。


俺の手を離れた中島は、やがて救急隊員によって病院へと運ばれて行った。





一報が入って来たのは、誰もが落ち着かない中で自習となっていたその時間内。

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