いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「黒崎ってやっぱりすごかったんだな。理事長とか医者の息子だからって色眼鏡で見て悪かった」
「さっきオマエすげえカッコ良かったよ!!!見直した!!!!」
率先して俺を攻撃していた奴らが、頬を紅潮させながら握手を求めてくる。
なんだよ今更……。
それでも、やっぱりうれしくて、いつもなら出てきそうな悪態の言葉なんて思いつかない。
ただ、そいつらと喜びを分かち合いたいと思った。
クラスに溶け込めないのは、環境のせいにしていた。
でも俺だって自分の周りに壁を作っていた。
鉄壁な壁を。
"必要なのは、壁を壊す勇気"
……そうだな。
その壁を破る一歩は、まずここから。
俺は立ち上がると教壇の前まで歩き、足をとめた。
「白鳥」
俺は知識があったとして、普通の高校生がこんなことに手を貸すのは相当の勇気だったはず。
それを憶することなく名乗り出てくれた。
「俺一人じゃ無理だった。ありがとう」
手を差し出すと、白鳥は一瞬目を丸くしたが、
「ほんとは俺、すげえ怖かった。けど、黒崎を信頼したから手を貸せた」
その顔を緩め、俺の手をガッチリ握ってくれた。
達成感以上の感情が俺の中に湧き上がり、俺も自然と笑う。
学校で笑うなんてはじめてじゃねえの?
人との付き合いなんて面倒なだけだと思っていた。
けど、仲間って……案外いいものなのかもしれないな。
ふっ、と顔をあげると。
涙を流しながら、それでも一生懸命笑って拍手を送ってくれている柏木が目に入った。