いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
二度も拾ってくれるはずもない彼は、黙って落ちたペンケースを見ただけでそのまま席に着いた。
その姿はまるで昨日も学校に来ていたみたいに堂々としていて、そして相変わらずの冷たさを放つ。
……問題児なのか英雄なのかわかんないよ。
でもそれが黒崎くんだよね……なんて安心もするあたしは、床に向かって笑みを零しながらペンケースを拾い上げた。
休み時間になると、黒崎くんは男子に囲まれていた。
「黒崎頼むって~、おまえのバスケに惚れ込んだんだよ~」
「いや待て、サッカー部が先だ!」
クラスメイト達が自分の部に勧誘してるのだ。
あれだけの運動神経を持っていれば当然かも。
誰も黒崎くんが嫌いだったわけじゃない。
壁を作っている相手と、どう接していいか分からなかっただけ。
あの日、黒崎くんが中島先生のために行動を起こし、律くんの手を握って笑ったことで壁は壊れた。
黒崎くんが壁を壊したことで、周りも変わったんだ……。
「とりあえずサッカーしに行くぞ!」
昼休みには、律くんや和久井くんを筆頭に男子たちが嫌がる黒崎くんを引っ張るようにして外に連れ出した。