いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
「……あの時は、告白を無下にして悪かった」
「……」
「ほんとは……嬉しかった」
「……っ、」
「柏木のこと、大切にしてやる自信はねえけど……大切にしたい気持ちは誰にも負けねえ」
不器用すぎるその言葉は、なによりも黒崎くんの人柄を表していて。
飾らないシンプルなその言葉が、黒崎くんの気持ちを本物だって伝えてくれる。
「俺と……付き合ってくれるか?」
少し不安そうな声が体を通して響く。
「……うんっ……」
気付けば涙が溢れていて、あたしは声にならない声で何度も何度もうなずいた。
そっと、体が離される。
「美優」
はじめて呼ばれた名前に目をパチパチとさせれば、黒崎くんの顔は真剣で。
「ずっと、呼んでみたかった」
甘美な声で囁かれる。
「黒崎く…」
あたしだって呼びたかった彼の名前を口にしようとすれば、細くて長い人差し指がその唇を封じた。
「柊哉」
俺の名前だ。
教えるようにゆっくりそう唱えられて。
「しゅう……や……」
呼び慣れない名前をはじめて口にした。
呼び慣れないどころか、聞き慣れない名前をいきなり呼ぶのなんてハードルが高すぎるよ……。
体がくすぐったくて、へんな感じ。
「俺のこと名前で呼ぶヤツいねえし、危うく自分の名前忘れそうになる」
拗ねたように唇を尖らす仕草が可愛くて、思わずクスッと笑う。