いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
まだテキストを落としたまま、ぼう然と黒崎くんが消えた教室の扉を見つめる。
黒崎くんは、今1番会いたくない人。
今まで塾で見かけたこともなかったのに、どうしてこのタイミングで鉢合わせしちゃうの?
もしかして、同じ塾だって向こうは知ってた?
名前を知ってたんだ……って驚くくらい認識されてないって分かってたくせに。
じゃあ、昨日のあれはなに……?
あたし黒崎くんなにか、した……?
「なんか感じ悪いな……」
あたし不信感を抱きながら、テキストを拾い集めた。
学校と同じで、やっぱり身に入らない50分の授業を2コマ終えて教室を出る。
と、同時に隣の教室の扉も開く。
「あー、やっと終わったねー」
「このあと遊びに行かない?」
「いいねえ!」
騒々しい声を連れて。
背の高い男の子と、明るく髪を染めた女の子ふたり。
その集団は、あたしの前をタラタラと歩き始めた。