いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。


まだテキストを落としたまま、ぼう然と黒崎くんが消えた教室の扉を見つめる。


黒崎くんは、今1番会いたくない人。


今まで塾で見かけたこともなかったのに、どうしてこのタイミングで鉢合わせしちゃうの?

もしかして、同じ塾だって向こうは知ってた?



名前を知ってたんだ……って驚くくらい認識されてないって分かってたくせに。

じゃあ、昨日のあれはなに……?

あたし黒崎くんなにか、した……?



「なんか感じ悪いな……」



あたし不信感を抱きながら、テキストを拾い集めた。





学校と同じで、やっぱり身に入らない50分の授業を2コマ終えて教室を出る。

と、同時に隣の教室の扉も開く。


「あー、やっと終わったねー」

「このあと遊びに行かない?」

「いいねえ!」


騒々しい声を連れて。


背の高い男の子と、明るく髪を染めた女の子ふたり。

その集団は、あたしの前をタラタラと歩き始めた。


< 47 / 389 >

この作品をシェア

pagetop