いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
……あ。ちょっと邪魔だな。
行く手が塞がれたけど、狭い廊下。
追い抜かすのもどうかと思い、歩幅を小さくしてその後をついて行く。
……頭が痛いなぁ。
寝不足が祟ったのかも。今日はちゃんと眠れるといいんだけど……。
そんなことを考えていたあたしの耳に突如届いた声。
「だりーから、俺はパス」
……。
この背中、黒崎くんなんだ……。
黒崎くんは知らない人から、一日で声で判断できる人になってしまった。
「えー、柊哉(シュウヤ)がいないとつまんないよー」
下の名前が柊哉だってことも。
玄関につき、女の子ふたりは不満そうに口を尖らせながらスリッパを脱ぐ。
その後ろから、あたしはサッと自分の靴を抜き取った。
出来れば黒崎くんとは顔を合わせたくないし。
今のうちに抜かして先に出ようとすると。
「あれー?あなた明應高校の子?」
女の子のひとりに腕を掴まれ、身動きがとれなくなる。
「……えっ」
その子ははじめて見る顔だった。
4月だし、新しく入塾してきたのかもしれない。
「ねえ、もしかしてさあ」
するともうひとりの女の子が、面白いモノでも見つけたような声をあげた。