いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
ゴクリと唾をのむ。
「……は?」
「会話が筒抜けだったから。こんな真横で話されて、聞くなって方が無理だろ」
「……っ、だからって、美優を冷やかしたのかよっ…」
「"俺は美優だけ"、ねぇ……?」
さっきの言葉を黒崎くんが反芻して、律くんを見上げる。
……なに?
黒崎くんはなにが言いたいの……?
ざわざわと騒ぎ出す胸。
「おまえ、なんだっつんだよっ……!!」
声を荒げた律くんに、クラスメイト達がなにごとかと視線を送る。
あたしも同じ。
温和な律くんがこんなに怒るなんてめずらしい。
「律くんっ……」
あたしは小さく叫んで、今にも掴みかかりそうな律くんの袖をひっぱった。
律くんを止めたい、というより。
このまま続いたら、黒崎くんになにを言われるか気が気じゃなくて。
お願い、言わないで……。
あたし達がキスしたこと……。
律くんのシャツの袖をつかんだまま、あたしは黒崎くんの口元を祈るように見つめた。