いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
あたしには塾をサボるなって言ったのに、自分は部活をサボってデートしてくれた律くんがいとおしくてたまらない。
そんなにあたしを想ってくれてるなんて、ほんと夢みたい……。
しばらく見つめ合っていると、肩に置かれた手があたしをグッと引き寄せ律くんの顔が近づいてきた。
消したい記憶が蘇る。
黒崎くんと唇が重なったこと……。
だからこそ今、律くんにキスしてほしかった。
その事実は消えなくても、律くんの唇ですべてを消してほしいの。
そう思いながらゆっくり瞳を閉じたとき、律くんの体から微かな振動を感じた。
と同時に近づいていた律くんの気配が遠くなったのを感じて、あたしは目を開く。
「ごめん」
律くんは謝りながらズボンのポケットからスマホを取り出していた。
どうやら振動元は律くんのスマホだったみたい。