いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。



「きゃあっ!!」



反対の手で口をふさがれ、叫び声ももうどこへも届かない。

そうしているうちに、さらなる細い路地へ引き込まれる。



「んーーーーーっ!」



茂みの中に倒されたとき。


覆いかぶさってきたはずの男の姿が一瞬にして消えた。



「てめえ殺されてえのか」



───ガッ……!



「うぐ……っ、」



地を這うような低い声に、数発殴られるような音と、男がうめく声。



「うせろ」


「ぐはっ……!……うっ……」



そして……転がるようにしてその男は去って行った。



……あたし、助かったの……?



「はあっ……はあっ……」



それでも恐怖は拭えなくて、まだガタガタと震える自分の体をギュッと抱きしめる。


怖い……怖かった……。


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