いつか、このどうしようもない想いが消えるまで。
……え?
キス……。
頭の中が真っ白になって。
心臓がさらに暴れ出す。
胸から抜け出すことも忘れたあたしは、ただ、黒崎くんを見つめたまま……。
すると、その瞳がスッと狭められ。
「なにドキドキしてんだよ、単純」
更なる毒を吐くとあたしの体を解放した。
軽くなった胸元に、ふわり、と風が入ってくる。
「……ッ……」
確かに……ドキドキした。
薄いワンピースの生地1枚を隔てて、黒崎くんに鼓動が伝わっちゃったのも否めない。
だけど。
「さい、あく……」
今更隠しても仕方ないのに、胸の音を隠すように腕を胸の前でクロスした。
視線の先には大通りの灯りが見える。
きっとここからはもう家は近い。
「……もう、ここで大丈夫だからっ……」
恥ずかしさを隠すように、あたしは灯りに向かって駆け出した。
やっぱり黒崎くんは、ひどい人だ。