もしもの恋となのにの恋

「相変わらず、秋人は意地悪だね」
そう言って微笑む千鶴がどうしようもなく愛しい・・・。
俺はずっとずっと前から千鶴のことが好きだった。
なのに・・・だ。
俺はその『好き』を殺してきた。
その殺してきた感情が今更になって爆発しそうだ・・・。
嗚呼、情けない・・・。
「・・・ねぇ、秋人?」
千鶴の呼び掛けだ。
「何?」
俺はそれだけを口にした。
「今も私のこと、好き?」
千鶴の問いに俺は吹き出した。
「そう簡単に好きじゃなくなるのなら、ずっと片思いなんてしてないよ」
俺の言葉に千鶴は『そっか』と言ってまた笑った。
「ならさ?私と・・・付き合わない?」
千鶴のその言葉に俺は瞬き、息を飲み込んだ。
ゆっくりと千鶴へと目を向ける。
千鶴は恥ずかしげに俺を見て笑っていた。
「・・・それは・・・本気で・・・言ってるの?」
俺の問いに千鶴はコクリと頷いた。
「秋人さ・・・私の気が狂ったとでも思ってる?婚約破棄されて夏喜も死んで気がおかしくなったんだろうって思ってる?」
今度は俺がコクリと頷いた。
それを見て千鶴はまた笑った。
「私は正気だよ?こんな何もない私を秋人はずっと好きでいてくれた。その思いに私は答えたい。同情とか遊びじゃなくね・・・」
「・・・千鶴は俺のこと、本当に好きなの?友達としてじゃなく・・・一人の男として・・・」
俺の問いに千鶴は目を閉じ、小さな溜め息を吐き出した。
「正直、まだよくわからない。けれど、私は秋人と一緒にいると落ち着くし、幸せだって思う。今は・・・それだけしか言えない。・・・ごめんなさい」
千鶴の言葉に俺は頷いた。
急ぐことはない。
もしも、千鶴が本当に俺を好きになり、思ってくれるのならこれほど幸せなことはない。
例え、千鶴に俺の思いが届かずとも俺はもうそれでもいいと思う。
もう、『もしも』と『なのに』の恋はやめよう。
俺たちは変わるんだ・・・。
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