もしもの恋となのにの恋

「・・・嘘じゃないよ。俺はずっと夏喜のことが好きだったんだ」
「え!?」
俺の根も葉もない嘘に夏喜は驚き、瞬き、喜色の色を覗かせた。
嗚呼、本当に馬鹿な女・・・。
吐き気がする・・・。
俺は作り笑いを僅かに浮かべ、小さな溜め息を吐き出し、目を閉じた。
そんな俺の隣で夏喜は恐らく今も硬直している。
ドクン、ドクンと言う生々しい騒音が夏喜の胸から聞こえてくるような気がした。
嗚呼、本当に気持ち悪い・・・。
「・・・本当に?」
震える夏喜の声に俺は閉ざしていた目をゆっくりと見開き、涙目になっている夏喜を無感情に見つめ見た。
女は本当に面倒な生き物だ・・・。
もう何度目ともわからないその言葉を俺は心の内で呟き、ゆっくりと夏喜を抱き寄せた。
こうして俺たちの関係は少しずつ壊れていくんだな・・・。
そう思うと悲しいと感じるよりも愉快だと感じる気持ちの方がいくらか勝った・・・。
嗚呼、本当に俺は嫌な男で幽霊だ・・・。
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