もしもの恋となのにの恋
もしも

秋人の言葉に私はただただ驚くことしかできなかった。
嘘だ・・・。
そんなこと、あるはずがない・・・。
秋人が私のことを好き?
まさか・・・。
だって秋人はずっと千鶴のことを・・・。
けれど、もしもそれが間違いなら?
いや、けれど・・・そんな『もしも』のことなんかあるはずがない・・・。
なのに・・・だ。
私はその『もしも』を何よりも望んできたし、今もその『もしも』の恋を望んでいる。
私は傲慢で強欲な人間だ・・・。
「・・・本当に?」
そう言った私の声は震えていた。
秋人は閉ざしていた目をゆっくりと開き、涙目になっている私を見つめ、手慣れた様子で私を抱き寄せた。
私が初めてじゃない・・・。
そんなこと、わかりきっているのに私は悔しかった。
私が秋人の初恋の相手で何をするのも私が初めての相手だったならよかったのに・・・。
そんな『もしも』のことを考えても仕方がない。
わかっている・・・。
なのに・・・だ。
それでも私はその『もしも』を考えずにはいられない。
嗚呼、本当に悲しい・・・。
けれど、そう悲しいと思うよりも今の私は嬉しいと感じていた。
当たり前だ。
思いが通ったのだから・・・。
例えそれが嘘でも私は嬉しい。
嗚呼、こうして私たちの関係は少しずつ壊れていくんだな・・・。
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