もしもの恋となのにの恋
忍が死んだ・・・。
その事実を私たちは仕方なく受け入れた。
受け入れなければ私たちは前には進めなかった。
けれど、私も秋人も夏喜もその事実を当然だが受け入れたくはなかった。
私は今も心のどこかでまだ忍の生存を疑っている。
本当はこれは夢で夢から覚めたら忍は生きていて・・・って。
けれど、そうなると今度は司の生存がなくなってしまう。
現実はいつだって残酷で息苦しい・・・。
そして、私は傲慢で強欲な人間だ。
私は忍も司も失いたくはない。
けれど、もしも本当に忍が死んだのが夢で忍も司も現実世界で生きていて、今も二人が私の側で存在しているのならば私は忍と司のどちらを選ぶのだろうか?
私を見ていない忍と私を見ていてくれる司・・・。
叶わない恋と叶う恋・・・。
どちらも私は望むし、どちらも私は手放したくはない。
けれど、どちらもを望むことは許されないし、どちらか一方を手放さなければならないことを私は知っている・・・。
現実はいつだって残酷だ。
夢物語のように甘くはない。
だからこそ現実は面白く、辛いのだ・・・。
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