もしもの恋となのにの恋
唯一無二の親友
夏喜と電話を終えた俺は大きな溜め息を吐き出していた。
夏喜とは小学校からの付き合いだが俺と夏喜はそこまで親しい間柄ではない。
なのに・・・だ。
なのになぜ俺は『一緒に出掛けないか?』など口にした?
夏喜のことは好きでも嫌いでもない。
夏喜はこれと言って容姿、性格ともに特徴のない人物だ。
もしも、その容姿に特徴があるとするならば、それはスラリと伸びた指先でその性格に特徴があるとするならば、それは千鶴を人一倍、気にかけていると言うところだろう。
それぐらいにしか俺は夏喜を認識していない。
まあ、そんなこと千鶴には口が裂けても言えないことだ。
千鶴は夏喜のことを唯一無二の親友だと言う。
そして、夏喜も千鶴のことを唯一無二の親友だと言う。
二人は唯一無二の親友・・・。
二人を知る者はそう言う。
だが、俺はそうは思わない。
千鶴の唯一無二の親友は夏喜ではない。
俺はそう思う。
俺はスマホの液晶画面に表示されたデジタル時計をぼんやりと凝視した。
時刻は午前2時を少し回っている。
そのスマホの液晶画面に表示されたデジタル時計は音もなく、また1分と言う短くも長い時が過ぎ去ったことを数の大きくなった数字で指し示した。
夏喜とのちょっとしたデートの行き先は水族館にでもしよう・・・。
俺はそう決めるとゆっくりと浅い眠りの中へと落ちていった。

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