もしもの恋となのにの恋
在りし日の情景と声
誰かが暗闇の中で私の名前を呼んでいる・・・。
私はその声のする方へと目を向けた。
けれど、暗闇のせいで誰の姿も捉えることはできなかった。
一体、誰だろう?
「千鶴ー!」
その高い声は本当に懐かしいものだった。
嗚呼、そうか・・・。
この声は・・・葵のだ。
私は葵の声のする方へと駆け出した。
ストン・・・。
そんな音が聞こえた気がした・・・。
それと同時に暗闇は消え、在りし日の情景が私の目の前には広がっていた。
それは中学入学時の情景だった。
私はガヤガヤと騒がしい一年一組の教室の中にいて、自分の席に行儀よく着席していた。
「・・・千鶴」
私の名前を呼ぶ、聞き慣れていた心地のいい声が左横から聞こえてきた。
私はその聞き慣れた声に自然と笑んでそちらのへと振り返った。
嗚呼、懐かしい・・・。
そして、そこに居たのは・・・。
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