この想いを口にさせてください。
『うし!俺の勝ち!っと、資料はここでいいかな?』
どさっと資料の束を置いた優輝くんは少し息をついた。
『ほんとにありがとう。重かったよね?ごめ』
『はい、ごめん禁止!』
そう言って、優輝くんは私の口をそっと手でふさいだ。
『っ!?』
『資料室に先に入ったのは俺だから。勝った俺の言うことをゆずは聞くこと。』
ニコッと微笑んでいる優輝くんとは打って変わって、私は頬を赤くする一方だった。
『もうゆずが俺に謝るのは禁止!ゆずはすぐにごめんって言うから。もう聞き飽きた!つーことで今後一切ゆずの謝罪は聞き入れません!俺がゆずを助けるのは当然のことなので!』
パッと手を離されて、優輝くんはくるりと扉の方へ体を向けた。
『これくらい…俺にさせてよ…。かっこつかないし…。』
少し低めの声でつぶやかれた言葉が、私の耳に入ることはなかった。
『ゆ…きくん?』
『戻るぞ、ゆず。よし!次は教室まで競争な!』
『え?!ちょっとまっ…って速っ!!』
『ほらゆず!早くしないと置いてくぞ!』
『は、はーい!』
大きな声で返事をして、私はまた彼の背中を追いかけた。