この想いを口にさせてください。




それから家に帰って、俺は自分の部屋の引き出しからあるものを取り出す。


『つ、ついにこの日が来るかもしれない…。』


小さな箱をそっと開けて、顔を出したのはひまわりのブローチだった。


一目見てゆずが思い浮かんで、気がついたら買っていた。

その時はゆずに告白をしようと決意をしていたが、できぬままずるずると今日を迎えてしまった。


『…たとえ明日違う話だったとしても…明日は必ずこれを渡そう。』


そして言うんだ。


君が好きだと。


もちろん。
ブローチと一緒に入っていたこの花言葉もそえて。


『……ダメだ!なんかじっとしてらんないかも…。コンビニでも行くかな…。』


ブローチの入った箱をそっと引き出しに戻して、俺は立ち上がって階段を降りる。


『あれ?優輝どっか行くの?ゆーちゃんのとこ?』


『っ!ち、違う!』


降りた所で出くわした母さんにそう言われて、思わず息をのむ。


『なーに?焦っちゃって。ゆーちゃんのことになるとすーぐ顔色変わる。』


『べ、別にいいだろーが!母さんには関係』


『あら?将来の娘になる子は母さん関係あるわ?』


『な、何言って!』


『あーあ。ゆーちゃんの花嫁姿早く見たいわ。』


『ゆ、ゆずの気持ちも考えろし!!』


『はいはい。』


『ったく…。ちょっとコンビニ行ってくる…!』


そう言って、俺は赤くなった頬を隠すようにそそくさと家を出た。


…なんなんだあの母親は…。


息子からかってなにが楽しいんだっつの!


でもまぁ…


ゆずの花嫁姿の隣で…
俺はタキシード着たいな…


なんて…。


って、気が早すぎるな…。


あー…

明日が楽しみだ。


そんなことを考えながら歩く俺の後方から、

キキーッと嫌な音を立てた車が向かって来ているのに気が付くのに、俺はどれだけ時間がかかったか。


振り返ったのと同時に

ドンッという鈍い音が耳を突き刺して、

全身が鋭い痛みに襲われる。



ゆず…!


そんな時に心の中で叫んだのは彼女の名前で、

もうろうとする意識の中で、

俺が最後に思い出したのは

彼女の優しい笑顔だった…。





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