この想いを口にさせてください。
私の特権
『好きです!』
校舎裏に響き渡るきれいなその声に、私は一瞬恐怖を覚えた。
『ごめん…、気持ちは嬉しいんだけど…』
まゆ根を寄せながら、申し訳なさそうに言う彼の声に、すぐにその恐怖から解放される。
『そっか…。』
そう言って、女子生徒は足早にその場を去ってしまった。
その後ろ姿を、優輝くんはいつも切なげに見つめる。
何回目だろうか…。
この光景を目の当たりにするのは…。
見る度に胸が張り裂けそうになるくらい苦しくなって、同時に怖くなる。
彼はいつも告白を断る。
誰かが好きとか、
この人じゃダメだとか…
きっと彼はそんな理由で断っているんじゃない…。
私にはわかる…。
彼はきっと…
『…ゆずを迎えに行かなくちゃ…』
『…っ…』
私がいるからなんだ…。
ボソッとつぶやかれた言葉は、どこか切なく感じられた。
優輝くん…
ごめんなさい…。
去っていくその背中に心の中でそう告げれば、自然と涙が込み上げてくるように目元が熱くなるのを感じた。