名のない足跡
何故かそこから、どうやったらウィンに彼女が出来るかに花が咲き(かなりお節介)、あたしとライトはジェマに着くまで小声でペラペラと話した。
もし、ジェマへの道がボコボコとした地面じゃなく、きちんと舗装された道だったら、あたしは右肩に何度もピクッとした反応が伝わっていたことに、気づいてたかもしれない。
ジェマは、自然豊かな小さな町。
ひっそりとしているかと思えば、町ではいろいろな祭りが催され、人々で賑わっていた。
あたしたちは町の入り口で降りると、魔法屋を探しに歩き出した。
「昨日調べといた。こっち」
三時間も寝てたくせに、まだ眠そうにしているウィンが指を差す。
その先には、少し小高い丘があって、ポツンと一軒家が建っている。
「あれ、何か普通のお家…」
「どんな想像してたんだよ」
「魔術師の家だよ?何かこう…ドロッとしてそうな」
「何だそりゃ。行くぞ」
…なんだか不機嫌な気が。
寝覚め悪いのかな?
眉をひそめつつも、ウィンの後ろに従う。その後ろをライトがついてくる。
本当に、どこにでも建っているような普通の家だった。
呼び鈴がないので、扉をそっと開けて訪ねる。