名のない足跡
「…こんにちはー…誰かいらっしゃいますかー…?」
変人というウワサを聞き、早くも弱腰。
でも、パタパタと走って、あたしたちの前に現れたのは…
「いらっしゃい!」
―――こ、子供ぉ!?
ポニーテールをした、十歳くらいの女の子が、そこにいた。
女の子はにっこりと笑い、どうぞどうぞ、とあたしたちを中へ招き入れた。
あたしは驚きつつも、とりあえず自己紹介。
「えっと…あたしは、ルチル。こっちがライトで、あっちがウィン」
「知ってるわ。姫様でしょ?」
あたしは、しまった!と思い口を押さえた。
ウィンがすごく睨んでる。すごく。
あぁ―――、あたしのばかッ!
あたしの焦りを気にすることなく、女の子が続ける。
「大丈夫。秘密主義者だから。あたしは、ロズ」
魔術師ロズは、ふふ、と笑って、「何か聞きたいことは?」と言った。
「あっ、聞きたいことっていうか…サヴァ国に行きたいんだけど…」
「ええ、それで?」
何でか得意気に聞いてくるロズを不思議に思いつつ、あたしは答えた。
「それで…連れてって下さい。お願いします」
「…え!?」
ぺこりと頭を下げると、ロズは驚いてしまった。
何か変なこと言ったかな。