名のない足跡

「それ…、だけ?何でこんな子供がーっ!とか、あんた本当に魔術師?とかないの?」


「えっ、そんなこと思わないけど…。魔術師なんでしょ?」


何か変わった子だな、と思い眉をひそめて聞く。


するとロズは、まじまじとあたしの顔を眺め、突然大声で笑い出した。


「…子供とはいえ、姫様に失礼ですよ」


ライトがロズをたしなめると、ロズは「あら、ごめんなさい」とピタリと笑うのを止めた。


もう一度、あたしの方を見る。


「あなた、今までの人たちとは違うみたい」


何が?と聞こうとしたその時、ロズの体がぐにゃりと揺らぎ始めた。


小さな少女は、瞬く間に二十代の女性へと変化してしまった。


「ぅ、え!?」


思わず指を差して叫ぶと、ロズはにこにこと笑った。


「これが本当のあたしの姿♪今までは、あたしの子供のときの姿よ」


「実体変化…か」


ウィンがぼそっと呟くと、ロズは嬉しそうに頷く。


「そう!あたしの十八番の魔術よ。あの姿でいつも客を出迎えるの。大抵初めての客は、本当に魔術使えんのかー?って言うのよねー」


だからあんなこと聞いたのか、とあたしは納得した。



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