名のない足跡
でも、誰よりも驚いていたのは、あたしたちをここまで連れて来た隊長さん(多分)だった。
「えええぇぇ!?」
「おっ、どうした?メロン」
「メッ、メイロンですっ!わ、私は、他国の王を縛り△×※…」
もの凄い慌てぶりに、後半は何を言ってるのかサッパリわからなかった。
「あはは、そう慌てるな。結界を破ってきたから、賊と誤るのも無理はない」
相変わらず、アルファ女王は笑っていた。
「あの…手、解いてもらえませんか」
恐る恐るあたしがそう言うと、アルファ女王はおや、と首を傾げた。
「ルチル殿は、本当に縛られていたのか」
「はい?」
あたしが眉をひそめると、両隣のライトとウィンが立ち上がった。
両手を縛っていたはずのロープは、ハラリと床に落ちる。
「姫様には教えてませんでしたね」
ものも言えず、ぱくぱくと金魚みたいに口を動かすあたしに、ライトはにっこりと言った。
痛い思いをしてたのは、どうやらあたしだけだったらしい。
ライトに解いてもらってる間、あたしはウィンに八つ当たりをした(怒られたけど)。