名のない足跡
あたしは、そっとライトの服の裾を引っ張った。
振り返ったライトの視線を、しっかりと捉えて話す。
「…ライト、ありがとう。でも大丈夫よ?アルファ女王とジーク王だって、今は誰も側近がいないもの。あたしだけ護ってもらおうなんて、失礼だよ」
「姫様…」
コホン、とアルファ女王が咳払いをしたので、二人してそちらを見た。
「もちろん、部屋の前で待機してくれて結構。室内で何かあれば、私の責任だ。私は別に、戦うつもりなどはないよ」
ライトは、ほっと一息ついてから、低頭した。
「…失礼しました。先ほどのご無礼をお許し下さい」
「いや、構わないよ。では、ルチル殿。こちらへ」
あたしは、ライトとウィンに精一杯笑ってみせて、促されるままに謁見の間へと足を踏み入れた。
―――――国の運命を決定する対談が、始まる。