名のない足跡
「えッ!? ルチル殿!?」
「…よほど気を張ってたんだろうな」
驚くアルファ女王とは反して、ジーク王は冷静に席を立ち、手を差し伸べてくれた。
「俺も、受け取るよ」
「…ジーク王っ…」
よかった。
本当によかった。
あたしは、国を護ることが出来たんだー…
†††
対談を終えたあたしは、しばらく腰が抜けて動けなくなってしまった。
アルファ(呼び捨てで呼び合うことに!)の提案によって、一晩だけサヴァ国の宮殿に泊まった。
無事に対談を終えたことに対して、ライトは飛びっきりの笑顔で「よく頑張って下さいました」って褒めてくれた。
ウィンも、「まぁ、頑張ったんじゃね?」って言ってくれた。
ウィンにしてみれば、この上ない褒め言葉だったと思う。
緊張が解けて、その日一日、あたしはぐっすりと眠った。
そして翌朝、いざ帰国!っていう時に、事件は起きた。
「えっ!?魔法屋がない!?」
あたしの目の前には、申し訳なさそうなアルファの姿。