名のない足跡
「…すまない。私は魔法は全く使えないし、ジークは使えるのに帰ってしまったし…。魔法屋はあるにはあるんだが、ルチルたち三人を送れるほどの術師がいないんだ」
…ってことは、もしやロズはすんごい魔術師なのでは。
もう一度お礼を言わなくちゃ、と心に決めてから、あたしはウィンを見る。
「…ちょっと、ウィン!! だから荷物必要だって言ったじゃないっ!!」
「姫様、ウィンもこの国のことを熟知しているわけでは…」
ウィンに食ってかかるあたしに、ライトはなだめるように言った。
しかしその言葉は、あたしに衝撃を与えた。
「ライトってば、いつの間にウィンに丸め込まれたのっ!?」
「え、いえ、そういうわけでは…」
「だ―――ッ、うるせぇなッ!!」
これまで一言も発しなかったウィンが、急に大声をあげたので、あたしとライトは驚いた。
「ほんっと静かに出来ねぇな、あんた。対策ぐらい用意してるっつの!」
思いっきり、ウィンにデコピンされたあたしは、思わずわめく。
「いったーい!! 何も、デコピンすることないでしょっ!?」
そんなあたしたちのやりとりを、アルファは笑って見ている。
原因はサヴァにあるのにっ。アルファめっ。