名のない足跡
「対策って何ですか?」
ライトが聞くと、ウィンはお得意の不敵な笑みで言った。
「俺」
「…は?」
見事に、あたし・ライト・アルファの声が重なった。
い…今、なんと?
「"俺"って、あんたっ…。熱、熱ないっ!?」
あたしが手のひらをウィンのおでこに当てようとすると、ウィンが怒鳴った。
「ねぇよッ!! 俺が魔法唱えるっつってんだよッ」
そう言って、ウィンはポケットから石っぽいものを取り出した。
「それは、魔石ですか?」
ライトが、珍しいものを見るように、ウィンが持つ小さな石を見て聞いた。
「魔石って…魔法力を増長させる石?」
ふと、昔父様が、珍しいんだぞーと言って石を見せてくれたのを思い出して、あたしは言った。
すると、アルファが「そういえば、新しく魔石の店が出来たなー」とか、のんきに言っている。
「そ。今朝この国をまわって手に入れてきた」
「えッ!? ずるい!! あたしもまわりたかったのにッ!! …って、ウィンってば魔法使えるの?」
あたしが眉をひそめて聞くと、ウィンはムッとして答えた。
「俺の祖母が魔術師なんだよ」