名のない足跡
人は、誰でも魔力を持っている。
でも、魔力の大きさは人によって様々で、大体の大きさは、家系の血筋で決まってしまう。
もちろん、魔法と接点のない家系で生まれても、大きい魔力を授かる人もいるし、ある日突然才能が花開く時だってある。
その逆もまた然り。
誰だって、訓練すればそれなりの魔法を使うことができる。
あたしにも、多少の魔力はあるんだけど…
でも魔法は難しくて、習う気がしなかった(本音)。
「じゃ、やるか」
ウィンの言葉にハッとしたあたしは、辺りを見渡す。
「えっ?魔法陣ないけど…」
「ウチは魔法陣使わない家系なの」
…家系によって特色があるらしいデス。
ウィンは、魔石を強く握り、早口で魔法を唱え始めた。
固唾を飲んで見守っていると、アルファに小声で声をかけられた。
きっと、アルファもウィンを邪魔しないようにしてるんだと思う。
「ルチル、これからもよろしくな」
その言葉に、笑顔で頷いた瞬間、視界が闇に包まれた。