名のない足跡
でも、城内へ足を踏み入れた瞬間、あたしは立ち止まったライトにぶつかった。
「ぎゃっ!! …何、どしたのライト…」
ぶつかった部分をさすりつつ、ライトの横から顔を覗かせると、城内の光景が目に入る。
「姫様…これは…」
あたしが何か言おうとするうちに、アゲートさんが駆け寄って来た。
「お帰りなさいませ、ルチル様!ライトくん!」
あたしは顔を輝かせて、アゲートさんにお礼を言った。
「アゲートさんっ!ありがとうございますっ!!」
「お気に召して頂けましたか?」
「はいっ!! とっても!!」
わけがわからない、という顔をするライトに、あたしは言った。
「あのね、国を出る前に、アゲートさんにお願いしておいたの。城内の大掃除と、模様替え!」
あたしは、仕事のやる気を一層引き出すには、まず身近なことから!って思った。
城内は、今までもきちんと掃除されてたけど、よっぽどメイドさんたちが頑張ってくれたのか、床はピカピカ。
シャンデリアの明かりが、床に反射している。
壁にかけられていた絵画も、古いものは取り替えられていた。
前よりも花を生けた花瓶を置いたおかげで、いい香りが鼻をくすぐる。