名のない足跡
4.通り雨
激しい雨が、絶えず地面を打ちつける。
ここ一週間、雨の日が続いていた。
「あーあ…」
窓の外を眺めて、あたしはため息をつく。
対談の日から今日まで、特に何も変わらない毎日を過ごした。
アルファやジークとは、たまに連絡を取り合ったりする。
あたしの仕事は、相変わらず書類やらなにやらに署名するだけ。
それだけじゃ嫌だから、あたしなりの行動をしてみたんだけどね。
例えば…そう、書庫の本棚を新しいのにしたり、本を増やしたり。
文官の人たちは喜んでくれたし、書庫の出入りが増えたって、セドニー長官が言ってた。
あとは、武闘場を建設してもらった。
屋根がついてるから、快適に訓練が出来るの。
そしたら、デュモル隊長が泣きながらお礼を言ってくれたっけ。…驚いたけど。
確実に、良い方向へ向かってると思う。
アニスと話してると、他の文官や武官がやってきて、話は盛り上がるし、多くの人の名前を覚えられた。
廊下を歩いていると、気軽に声をかけてくれる人も増えたし。
…でも、何でかな。
何かが足りない気がするんだ。