名のない足跡

†††


「うーん、涼しー」



清々しい朝を迎え、あたしは朝食を済ませたあと、城の外に出た。


あの日から、あたしは毎朝城の庭を散歩するのが日課となった。



…あの日とは、ライトが好きだ、って自覚した日。


ウィンの胸を借りて思いっきり泣いたから、多少すっきりした。


この気持ちと、しっかり向き合おうって決めたんだ。


そしたらあら不思議。


いつも通りにライトに接することが出来た。


ライトを見てキャーキャー言うメイドさんたちを見ると、カチーンときちゃうけど。



ウィンも、いつも通りの意地悪キャラに戻ってくれて、嫌なはずなのに嬉しい。


何もかも元通りになって、充実した毎日を過ごしていた。


…でも、この日、また新たな変化が訪れたんだ。



「ル、ルチル様ッ!!」



門番に挨拶しようと近づくと、困った顔の門番に小声で名前を呼ばれた。


「えっ?何?」


駆け足で門までたどり着くと、門番その一(残念ながら、名前はわからず)がヒソヒソと話し出す。


「実はですね、昨日の夕暮れ時に、一人の若者がやって来まして。ルチル様に会わせてくれ、と言うんですよ」


「あたしに?誰?」





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