名のない足跡
するとそこで、門番その二が話に加わる。
「そいつ、身分証も何も持ってなくて、手ぶらなんですよ。ですから、身分証持って、日を改めて来いって言ったんですよ」
「ですが、困ったことに、彼はルチル様を呼んでくれるまで待つ、と言って…」
門番その一とその二は、二人同時に門の外を指さした。
「…えっ、まさかっ…」
門の隙間から外を覗くと、予感的中。
…いた。
門に寄りかかって、寝ている。
「ちょっと、何やってんのよ!あなた誰ッ!!」
思わずあたしが叫ぶと、謎の少年(見かけ的に…同い年ぐらい?)は、ゆっくりと目を開いて、あくびをした。
「ふあ――ぁ。…あれっ、君、ダレ」
「…こっちが聞いてるんですけど…」
少年は、よっこらせ、と立ち上がると、門を挟んであたしと向かい合った。
「オレは、アズロ。君は…もしかして…」
門番その一・二がはらはらと見守る中、あたしは答えた。
「あたしがルチルだけど、何か用?」
少年、もといアズロは、一瞬驚いて、あたしを指さす。
「…へー。君がルチル女王。へー」
「…何よ、失礼ねッ」