名のない足跡
変なヒト、と思いつつも、まだ用事を聞いてないから、追い返すわけにもいかない。
「えっと、アズロ、くん?何しに来たの?」
すると彼は、さらりと言った。
「オレを雇ってくれない?」
「………え?」
†††
「…それで、城内に入れちゃったんですか」
「うん…」
「あんた、落ちてるモノ何でも拾うタイプだろ」
「…ウィン、あたしのこと何だと思ってるの」
アズロは、あたしたち三人の前で、思いっきり食事をかき込んでいる。
三日間何も食べてないらしくて、さっき門の前で急に倒れた。
とりあえず放っておけなくて、あたしはアズロを城に入れた。
「ぷはー、うまかった」
ほんの数分で、たくさんの皿を平らげたアズロは、あたしを見る。
「さっきの続きね。オレを雇ってもらいたいんだ」
「どこか…入りたい部があるのよね?だったら、そこに…」
「いや、どこでもいーよ」
「はあ?」
あたしは眉をひそめる。
どこでもいいって、そんな。
「あなた、やる気あるんでしょ?」
「んー…。まぁ、そこそこ?」
そこそこって。そんな適当な…。