名のない足跡
「門番や、見張り、夜の巡回…王家の方やお客様の護衛などですね」
「ふーん?それなら楽そ…出来るかも」
やっと興味(?)を持ってくれたことが嬉しくて、あたしは話を進める。
「それじゃ、護衛部に行ってみたら?…ライト、後頼んでもいい?」
アズロのことも気になるけど、あたしにはあたしの仕事もある。
「はい。任せて下さい。こっちです、アズロ」
二人が角を曲がるのを見届けてから、あたしは執務室へと歩き出した。
†††
「アズロは、いつから護身術を?」
訓練場に入ると、俺はアズロに着替えを渡して、聞いた。
「んー、と…五歳ぐらい?うわっ、これ着んの?重ッ」
「我慢して下さい。身を守る為ですから」
今日の訓練は午後から。
だから今ここには、俺とアズロしかいない。
俺は、自分の長剣を鞘から抜き、近くに掛けてあったタオルを手に取って磨く。
「五歳ですか…。俺より早いですね」
着替え途中のアズロが、ピタリと動きを止めた。
「…まさかこれから…いざ実践ー!とかやっちゃう系?」
「はい、やっちゃう系です」