名のない足跡
その倉庫にいるのは、三人と一匹。
クセのある茶髪に、髪より少し深い茶色の瞳をもつ青年。
赤茶の短髪に、ピアスをつけている青年。
クリーム色のふんわりとしたショートヘアーの女性。
そして、シマリス。
彼らの会合は、いつもこの一言から始まる。
「で、変わったことは?」
クセのある髪をかきあげながら、あとの二人を交互に見ると、もう一人の青年が答える。
「それがさ、ラッド。あったんだよ、変わったコト」
「本当か!? モルファッ」
ラッドと呼ばれた青年は、モルファに期待の眼差しを向けた。
最近、何も変わったことがない為、会合がマンネリ化していたのだった。
ないはないでいいのだが、ラッドにはそれが、嵐の前の静けさのように思えていた。
「マジで。昨夜、ふらーっとアイツの部屋の前を通ったんだけど…」
「待て待て。何でふらーって通ってんだよ」
ラッドの突っ込みに、モルファはうっと言葉を詰まらせる。
「好きなコを一目見ようとしてたんでしょ」
「あッ、てめッ、ルーカ!!」
モルファが赤くなってルーカを睨むが、ルーカはツンとしている。