名のない足跡
「お前…、意外と一途なんだな」
「意外って何だッ!!」
ラッドの言葉が勘に障りつつも、モルファは続きを話し始める。
「…で、その時、アイツの部屋から不気味な笑い声が聞こえてきたんだよ」
「おう、キモいな」
「…真顔で言うなよ。んで、気になったオレは、忍び足でアイツの部屋に近づき、そして…」
「扉を蹴り破って中に入ったんだな!?」
「入ってねぇっつの!! アホか!!」
「ちょっとラッド、少し黙っててよ」
ルーカがたしなめると、ラッドは大人しくなった。
いくら人が寄りつかないとはいえ、大声で話していたら、万が一ってこともある。
「近づいて、聞き耳立てたんだよ。そしたら…気配的に三人ぐらいいたかな。とにかく、そろそろだとか、これからはとか話してた」
「…肝心なところが、聞こえてないじゃない」
ルーカの指摘に、モルファはムッと顔をしかめる。
「小声で話してたんだよッ。お前は何かないのか?ルーカ」
「…あるわ。長官たちの話を小耳に挟んだんだけど、フォーサス国とネスタ・サヴァの対談が無事行われたらしいわよ」
ルーカの話に、ラッドが顔を輝かせる。
「本当か!? …そっか、良かった」