名のない足跡
「…ライト?」
不安に駆られたあたしは、ライトに声をかけた。
ライトはすぐに反応して、あたしを見る。
「すみません姫様。…何か、仰いましたか?」
「…寝て」
「はい?」
あたしはライトの背中を押して、続ける。
「いーから、部屋戻って寝なさいッ!」
「え、姫様!? 俺は大丈夫で…」
「嘘」
あたしは、ライトを押すのを止めて、立ち止まる。
そして、消え入るような声で呟いた。
「…無理、しないで」
「…姫様…」
何でこんなに悲しくなるのか、自分でもわからなかった。
でも、最近のライトは、どこかいつもと違うから。
それが、どうしようもなく怖かった。
ライトは片膝を床について、うつむいたあたしを見上げた。
「…ありがとうございます。少し、休憩を頂きますね」
その笑顔は、いつもと変わらなくて、少しあたしを安心させた。
「すみません、アズロ。頼みます」
「りょーかい」
去っていくライトを見つめていたあたしに、アズロはため息混じりに言う。
「…わっかりやすいね、君」
「…………なッ!!」
その意味を理解したあたしは、すぐに顔が赤くなった。