名のない足跡
何が何だかわからないまま、自分はすぐさま地下へ下り、宝庫の前へ駆けつけた。
そこには、胸に短剣を突き立て、血の海に横たわっている国王がいた。
目を見張り、すぐに自分は国王のもとへ駆け寄った。
そのとき、まだ微かに息はあった。
誰がこんなことを、と聞いた自分に、国王は誰でもない、私自身がやったのだ、と答えた。
なぜ、と聞いても、国王はただ、それは言えない。だが、私は生きていてはいけないのだ、と、そう何度も呟いた。
最期に、二人の子供の名前を呟き、国王は息を引き取った。
「…つまり、何故国王が亡くなったのかはわからない…と」
セドニー長官は、困ったな、という表情をした。
その横に座っている、ロード副官が口を開いた。
「国王様のご遺体は、今どこに?」
「そのまま、宝庫の前で結界を張っております。元来、地下へは国王様とその補佐官しか入れないので、心配はありませぬが、念の為三重結界を張っておきました」
俺は感心した。三重結界は、並大抵の術者がかけられるものじゃない。
さすが、王の補佐とでも言うべきか…。