名のない足跡
3.並木道
ライトの動きは、素早かった。
一瞬にして、ライトはあたしを庇うように、アズロとの間に割り込んだ。
あたしには、ライトの背中しか見えなかったけど、ライトが緊張してるのがわかった。
「…そんなに警戒しないでよ、隊長」
そのアズロの声が、いつもと全く変わらなかったので、あたしは少し安心した。
でもライトは、一歩も動かず、緊張を帯びた声でアズロに問いかけた。
「…姫様に、危害を加える気は?」
「ないね。全く。…って言っても、信じてもらえないか」
うーん、と唸るアズロに対し、ライトは数歩下がり、あたしの横へ並んだ。
「…いえ、信じますよ」
「へっ?」
「嘘つけないでしょう、アズロは」
ポカンとしてるアズロを見て、あたしは「あ、確かに」と同意した。
「確かにって…。ついてたじゃん、オレ」
「でも、話してくれたじゃないですか」
「そ、そりゃそうだけど…。どーすんの、もしこれが演技で、とりゃー!ってオレが姫サマに襲いかかったら」