名のない足跡

「そうよ!!アズロまで狙われちゃうかも!!」


「平気だって。オレ、絶対に顔覚えられてないし。臣下が一人減ったことなんて、気づかないよ、ウィリー王は」


そう言ったアズロの瞳は、少し悲しみに満ちていた。


ライトが、ふと思いついたように聞く。


「アズロ、お母様は大丈夫なのですか?」


「あー、平気。ここでの給料、日給にしてもらったじゃん?ソレ毎日送ってるから」


アズロはポリポリと頭をかいて、遠慮がちにあたしを見る。



「あのさ…オレ、このまま雇っててもらいたいんだけど」



あたしが口を開くよりも先に、アズロが必死に話し出す。


「君のこと、裏切ったりしないよ。正直、ウェルスにはいたくなかったんだ。君がいいって言ってくれたら、お袋連れて、こっちに引っ越す。オレ、本気で君に仕えるし…」


「ストーップ。そんなに必死になんないでよ、アズロ」


あたしは、人差し指でアズロの額を軽くつついた。



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