名のない足跡
その様子を見て、アズロは相手が何の為にここに来たのかを確信した。
「正直に言っちゃうと、ウィリー王から聞いてたよ、あんたのコト」
すると相手は、居心地悪そうに、顔を伏せた。
「本当よくわかんないね。ウィリー王の考えも、それに従ってるあんたも。オレが口出しすることじゃないけどさ」
アズロは、小さくあくびをしてから続けた。
「オレはもう、ウェルスとは関わらないよ。これからは、あの子についていく。オレのことを言う気なら、あんたの王に言えばいい」
一向に口を利かない相手は、小さく首を横に振った。
アズロは目を丸くして聞いた。
「え、言わないの?…まぁ、言う価値ないか」
一人で虚しく笑ってから、アズロは冷たく相手を見た。
「…で?あんたはこの先どーすんの?あんたがこっち側に残るなら、それでいいにこしたことはないけど」
相手が肯定も否定もしないのを見て、アズロは背を向けて言った。