名のない足跡
伸ばしていた両手を下ろし、デュモルはふとセドニーを見た。
「それは…確かにそうだな。ってことは、つまり…」
「―――最初は、アイツを殺す気なんてなかったってことだな」
急に割って入ってきた声の方に、デュモルとセドニーは振り返る。
「…ウィン補佐!? どうなされたのですか」
「いや、ちょうどあんたらに話したいことがあって」
スタスタと近づいてくるウィンに、デュモルは尋ねる。
「最初は、殺す気なかったんなら…何で突然」
「どうした?デュモル。脳が衰えてきたようだな」
「ぐっ。うるせぇなー」
デュモルの問いに、ウィンが答えた。
「ウィリー王にとって、何か不都合なことが起きたんだ」
「不都合…それが、対談のことか?」
「そう。きっとウィリー王は、フォーサスが他国と親交を深めることを嫌ったんだ」
ウィンの言葉の後を、セドニーが次ぐ。
「おそらく、他国と協力されると困る何かがあるんだろう」
「何かって、何だよセドニー」
「それがわかったら、苦労はしないだろう」
ぎゃあぎゃあと言い合いを始めた二人に、ウィンはしれっと言い放った。
「何だ、わかんねぇのか?」