名のない足跡

二人は言い合いをピタッと止め、驚いてまじまじとウィンを見る。


「え…わかったのですか?」


「すげぇな。俺、感心」


ウィンは特に自慢げにする様子もなく、淡々と話し始めた。


「ここで、話は前国王に戻るんだ。なぜ、前国王は自殺したのか?」


「理由は…確か、"死ななければならない"とか何とか」


デュモルが答えると、ウィンは軽く頷いた。


ウィンは、あの時その場にはいなかったが、アゲートから話は聞いていた。


「"死ななければならない"。つまり、"生きてちゃダメ"ってことだ」


そこで、うつむいて考えていたセドニーが、ハッと顔を上げた。



「アラゴ様は…見てはいけない何かを見てしまった…?」


「ビンゴ」


ウィンが短くそう言うと、デュモルが口を挟んだ。


「見ちゃいけない?やっちゃいけないことをやったんじゃなくてか?」


「やっちゃいけないことをしたんなら、後始末をしなきゃならない。後始末を完璧に出来るなら、死ぬ必要はねぇし、出来ないなら死んだっていずれはバレちまうから、無意味だ」






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