名のない足跡

そんな国王のもとには、多くの人々が王に仕えるべくやって来た。


それは何よりも力になった。


…ところが姫様は、国王の娘だといっても、全てが瓜二つというわけではない。


政治、経済の知識など、(姫様には失礼だが)皆無に等しい。


王になるということは、全国民の上に立つということであり、全国民の命を預かるということになる。


―――十七歳の、少女が。


「皆様、不安だとは思われますが、お聞き下さい」


アゲートさんの一声に、カーネ司令官は不服そうであったが、口をつぐんだ。


「王が亡くなられたという出来事は、このフォーサス国だけの問題ではありませぬ。この事実は、いずれ国外へ流れるでしょう。今、我が国と他国との状況はどうでしょう?アラゴ国王様とメノウ殿のおかげで、交戦状態とまではいきませぬ。しかし、決して友好関係と言えるわけでもないのです。」


アゲートさんは、一度目を閉じ、静かに開いた。


「…特に、ウェルス国とは今まさに緊迫状態であります。王が亡くなられたと知れば、いつ交戦してくるかもわかりませぬ」


商連部のメノウ交易官は、ムッスリとした表情で何度も頷く。


そういえば俺、この人が話してるの見たことないな…。





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