名のない足跡

あたしの表情を見て、ロードさんはあたしが疑問に思ったことがわかったみたいで、答えをくれた。


「セドニー長官でしょ?あの人ね、元は戦闘部に所属してたのよ」


「ええ!?」


あたしが驚くと、ロードさんはくすくすと笑った。


「見えないわよね。デュモル隊長と一緒に、よく訓練してるとこ見かけたわ。その当時、戦闘部のダン隊長と、書籍部のキラ長官は親友だったの」


ロードさんは、顔を上げて、そこに何かがあるかのように、天井をじっと見つめた。


「楽しかったわ…。あたしはキラ長官に、セドニー長官とデュモル隊長はダン隊長にべったりだったから、キラ長官とダン隊長が会うときは、よく一緒に話してた」


「…でも…何でロードさんが長官にならなかったんですか?」


あたしがそう聞くと、ロードさんは視線をあたしに移した。


「理由は、よくわからないの。でもある日、キラ長官は失踪した。その半月後、近くの町で死体となって発見されたの。書籍部のキラ長官の机の引き出しには、"私に何かあったら、セドニーかデュモルに長官になってほしい"と書かれた封筒があった」




< 190 / 325 >

この作品をシェア

pagetop