名のない足跡

†††


カルム城の裏庭の隅には、墓地があった。


ある人物が眠る墓石の前に、セドニーは立っていた。



「…お久しぶりです。キラ長官」



そう言って、セドニーは墓石の前に、そっと花を供えた。


「最近は忙しくて、なかなか来ることが出来ませんでした。…すみません」


「許さん」


手を合わせ、目をつむっていたセドニーは、突然の声に驚いた。



「…なーんてな」



声の正体を知ったセドニーは、あからさまにため息をついた。


「…何だお前か、デュモル」


「何だとは何だ!…って、どっかであったなこんなセリフ」


苦笑しつつ近づいてくるデュモルに、セドニーは少し迷った末、尋ねた。


「珍しいな、お前がここに来るなんて」


「んー?いつまでも腹立ててちゃ悪いかなって思ってさ」


そう言いながら、デュモルはたった今セドニーが花を供えた墓石に目をやった。





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