名のない足跡
「…本当は今にでも、この墓石を蹴っ飛ばしてやりてぇけどな」
「デュモル、それは罰当たりだぞ!」
「わーかってるって」
デュモルは胸元のポケットから何かを取り出し、花の横に添えた。
「デュモル…それは、」
「はは、嫌がらせ」
悲しそうに笑うデュモルを見て、セドニーはそれ以上何も言えなかった。
彼は知っていた。
デュモルが、キラを好まなくなった理由を。
そして、デュモルが自分を憎んでいることを。
「あーあ、早いもんだな。時が経つってのは」
「…そうだな」
セドニーのそっけない返事に、デュモルは顔をしかめる。
「…んだよ、蹴っ飛ばすっつったこと、まだ怒ってんのかよ」
「そうではない。…何だ、お前は私のことをそのような狭い男だと思っているのか?」
「思ってるね。激・狭い男。…そうじゃないなら、何だよ」