名のない足跡
頭をくしゃっとなでられ、あたしは思わず笑みをこぼす。
だんだん、兄様が帰ってきたんだっていう実感が湧いてきて、嬉しくなる。
「兄様、本当に…」
どこに行ってたの?と聞こうとした瞬間、執務室の扉が開かれた。
みんなが、一斉に扉の方を振り向く。
そこにいたのは…
「モルファ隊長…ルーカ副隊長…!」
ライトが、驚きを交えた声で呟く。
モルファとルーカは、兄様の護衛。
よく遊んでくれてたこの二人も、ある日突然、兄様と一緒に消えてしまった。
モルファが、ライトを見て顔を輝かせた。
「ライト…!おー、久しぶりだなぁ!! おっ、アゲートのおっさんも!…と、見知らぬ少年が二人!」
そう言ったところで、あたしとモルファの目が合った。
「ルチル!! 相変わらずちっせーなぁ!!」
「ちっさくないッ!!」
思わず反論したあたしを見て、モルファとルーカが顔を見合わせて笑う。