名のない足跡

頭をくしゃっとなでられ、あたしは思わず笑みをこぼす。


だんだん、兄様が帰ってきたんだっていう実感が湧いてきて、嬉しくなる。


「兄様、本当に…」


どこに行ってたの?と聞こうとした瞬間、執務室の扉が開かれた。


みんなが、一斉に扉の方を振り向く。


そこにいたのは…



「モルファ隊長…ルーカ副隊長…!」



ライトが、驚きを交えた声で呟く。



モルファとルーカは、兄様の護衛。


よく遊んでくれてたこの二人も、ある日突然、兄様と一緒に消えてしまった。


モルファが、ライトを見て顔を輝かせた。


「ライト…!おー、久しぶりだなぁ!! おっ、アゲートのおっさんも!…と、見知らぬ少年が二人!」


そう言ったところで、あたしとモルファの目が合った。


「ルチル!! 相変わらずちっせーなぁ!!」


「ちっさくないッ!!」


思わず反論したあたしを見て、モルファとルーカが顔を見合わせて笑う。


< 199 / 325 >

この作品をシェア

pagetop