名のない足跡

「その兵器は、ある条件を満たさなければ発動しないらしいんだ。…そのうちの条件の二つは、代々フォーサス国の国王に受け継がれているらしい」


まだ口が利けないあたしに、兄様は一つ、と言って人差し指を立てた。


「呪文を唱える。それもかなり複雑な呪文だ」


深刻な話をしているはずなのに、その条件を聞いて、ああ、あたしには無理だなぁ、とか考えてしまった。


二つ、と言って、兄様は次に中指を立てて続けた。


「代々受け継がれる、王冠を被る」


「…王冠!?」


「ルチル、王冠は今どこにある?」


「ほ、宝物庫…鍵の番号は、あたしとアゲートさんしか知らないけど」


それを聞いて、兄様は少し安心したようだった。


「…それなら、すぐに盗られる心配はないな」


「でも、兄様。条件が揃ってるんじゃ、誰かに悪用されたり…」


「いや、条件はその二つだけだが、完全に揃ってはいないんだ」


「…?」


よく意味がわからず困り果てるあたしに、兄様は説明してくれた。




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