名のない足跡
「ははっ。いいぜ、やってやりますよっ、と」
最後の「よっ、と」の部分で、デュモル隊長は立ち上がった。
その瞳は、好奇心に満ちていた。
「立場的、小娘についていくのヤなんで辞めますーなんて言えねぇしな」
全くこの人は、というように、ユナ副隊長も続いて立ち上がる。
「隊長の暴走を止められるのは僕しかいませんので、お手伝いします」
何ィッ!?とデュモル隊長が睨む。
「暴走など俺がいつしたんだっ」とぶつくさ言うデュモル隊長を、「はい、はい」と軽くあしらうユナ副隊長の隣で、セドニー長官も立ち上がる。
「私の知識が、新国王様のお力になれたら、と思います」
「長官がムダな知識を植えつけないように見張りたいと思いますっ」
片手を挙げ、ロード副官も立ち上がる。
セドニー長官はムダ、という言葉に反応した。
「君はいつも私の知識をばかにするな」
「いつもじゃありません。時々、ですよ」
何でこう、長と副長は仲が悪いんだ、と俺は不思議に思った。
ケンカするほど仲がいい、のか?
しばらくして、唇を真一文字に結んでいたカーネ司令官が、申し訳なさそうに口を開いた。